4 今この瞬間との接触(contact with the present moment)
過去や未来にとらわれず、now and hereに焦点を当てることです。
「今この瞬間」には3つのポイントがあります。
1つは「今」とは過去と未来に挟まれた薄っぺらな瞬間ではなく、むしろ過去と未来を包含する永遠としての「今」であるという事です。
2つ目はこの「今この瞬間」と接触した状態というのは、鋭敏さや明晰性の感覚を伴い、行為の質を上げるという事です。
3つ目に、過去は記憶という思考、未来は想像という思考と密接につながっており、いつの間にか私たちは思考に囚われて、全てが生じている貴重な時間である「今」から切り離されてしまう。という事です。
さらにもう一つ付け加えれば、「瞬間瞬間たち現れてくる体験に対して、今この瞬間に、判断しないで、意図的に、注意を払うことによって実現される気づき」です。
「今この瞬間」につながろうとすると思考や感情が出てきて、邪魔してきます。
そのときは、以下のようにします。
(1) それらの思考や感情を、起こるまま、去るままにさせて、つながりを取り戻します。
(2) 集中力がさまよい出したら、起こった瞬間にそれを認めます。
(3) 思考への対処をした後にエクササイズに戻ります。
エクササイズの例
(1) 手動瞑想
今の瞬間、手がどの位置で、どうなっているのか、認識していくものです。手の動きをひたすら意識で追いかけます。
(2) 呼吸の瞑想
呼吸の出入りに意識を向けます。
今、呼吸がどうなっているかの認識、鼻先やお腹、胸など、自分が意識しやすいところで意識します。
お腹や胸ならば、お腹が膨らんでいる、すぼまっていると意識します。
呼吸から意識が離れ、思考に巻き込まれてしまったら、そのことに気付いて呼吸に意識を戻します。
思考にとらわれてしまうことは当然なので、何度も思考に囚われては呼吸に戻すことを行えばよいです。
(3) お茶のエクササイズ
実際に、お茶を入れて、様々に互換を働かせて注意深く観察することをセラピストが促しながら、お茶を味わうことをセラピストと一緒に行います。その際、日本における茶道は全道によって確立されたことや「マインドフルネス」と前途は深い関係があることを説明します。
さらに、この「お茶のエクササイズ」を宿題(ホームワーク)として実施します。
(4) 足を意識して文章を読むエクササイズ
自分の足に注意を向けたまま、以下の数行を読みます。
さいた さいた
チューリップの 花が
ならんだ ならんだ
赤 白 黄色
どの花みても
きれいだな
この童謡を読んでいる間、足を意識続けます。
自分の意識が童謡の一節の内容と足の間を行ったり来たりする感じだったり、足のことを思い出す時だけ足に意識を向けている、あるいは一節を読んでいる間ずっと足に十分に意識を向けることができるなどでしょうか。
このエクササイズは童謡を読みながら、足を意識続けることで、複数の物ごとに注意を向ける状態を体験できます。
また、このエクササイズが自分自身の物語に入りこみ過ぎることで、同時に起こっている他の物事の多くのことを忘れてしまう状態を良く表しています。
うつや不安、自尊心の低下などでは物語に飲み込まれると、その時起こっているその他の多くのことを忘れてしまい、自分の注意はその物語にだけ向けられます。
このエクササイズによって、心理的な痛みについて語るのと同時に、自分の手足や空気の動きなど、自分のない面や外の環境の中で生じている多くの事柄に注意を向けることができます。
ここで重要なのは、自分が呑み込まれている痛みを忘れたり、無視したりするための手段として、葦の意識を向けようとしているのではなく、今この瞬間に注目する練習を行うためのエクササイズです。
新聞を読んでいる間や、本を読んでいる間にもこのエクササイズを行うことができます。
(5) 5つの気づきエクササイズ
周りにある物5つに注目します。聞こえる音5つに注意を向けます。体の表面で感じるもの5つに注意を向けます。
(6) 雑用につながるエクササイズ
何も気にせず、起きていることに意識を向けます。
例えばアイロンがけであれば、しわや影がつくる形や模様、アイロンがけでの色の変化、アイロンをかけるときの音、シュワっという蒸気の音、物と物のスれる音などです。
これらをしているときに、出てくる退屈した気分や、思考などを処理していきます。