マインドフルネス(Mindfulness)とは
マインドフルネスという言葉は1881年に書かれた仏教の経典「東方聖典叢書」の英訳書で、パーリ語で書かれたサティ(sati)、サンスクリット語ではをマインドフルネスと英訳されたものです。日本語では「注意深さ」や「忘れないこと」という意味で、仏教の実践においては正念(しょうねん)になります。
欧米では仏教的、宗教的要素は薄められて紹介され、精神に健康的効果をもたらす瞑想の技法として取り入れられています。
マインドフルネスを利用した心理療法
心理臨床領域にマインドフルネスを導入したパイオニアはアメリカ・マサチューセッツ大学名誉教授のジョン・カバット・ジン(Jon Kabat Zinn)博士です。
1979年、マインドフルネスをベースにしたストレス軽減プロクラム、マインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness Based Stress Reduction:MBSR)を開発しました。
このメソッドが日本にも逆輸入され、2012年に日本マインドフルネス協会が設立されました。
マインドフルネスの効果
ACTの開発者の一人であるミシシッピ大学准教授のケリー・G・ウィルソン(Kelly・G・Wilson) 博士によると、マインドフルネスは、「人生への満足感」、「主観的幸福」、「バイタリティー」、「楽観主義」、「経験感」、「経験に対するオープン度」、「エモーショナル・インテリジェンス(心・感情の地性)」、「自己重要感」、「他者への共感」などを高める効果があるといわれています。
さらに、「軽度の抑鬱症」、「不安や心配」、「認知システムによる(ネガティブな)自動反応」、「その他の一般的な精神症状に対しても働きかけます。
また、精神病の患者が訴える妄想を和らげるともいわれます。さらに細胞レベルの健康に働きかけることが分かっており、アンチエイジングにも効果を発揮します。
マインドフルネスの手順
1 イスに座ります。
2 楽な姿勢で、背筋を伸ばします。
3 頭から足の先まで、体の感覚に注意を向けます。(温かいのか、冷たいのか、どんな嫌な感
覚もありのまま観察します)
4 呼吸だけに注意を向けます。鼻から息を吸って吐いて、出たり入ったりする感覚に注意を
向けます。
5 時々、注意が逸れて他のことを考えてしまうでしょう。注意が逸れたことを認め、再び呼
吸に集中します。
3まで進んだら、後は時間一杯まで4と5を繰り返します。
マインドフルネスの過程
1 何かあるたびに、心の思考が不安になるような議論を仕掛けてくる。
2 呼吸に意識を向ける、思考を観察するといったマインドフルネスの技法を使って不安や
恐怖の嵐をやり過ごします。
3 自分にとって、本当に意味のある行動を実行します。(ACT固有の目的)
ACTにおけるマインドフルネス
ACTでは、自分の感覚や感情、思考に気付くこと、つまりマインドフルネスであることを重要視します。
例えば、会社の上司が自分の頑張りを無視しているとします。その時に「上司は認めてくれない。」、「どんなに頑張っても無駄だ。」と感じたり、「自分は会社に不要な人間だ。」と考えたとします。
認知行動療法では、そう考えることの根拠や、そう考えるとどういう感情になるか、別の考え方はないか、別の考え方をすると自分の感情はどう変化するかなどを明らかにしていきます。
ACTでは、そのような考えを、自分の「マインド」が自分に語りかけてくる言葉として意識します。
バスの運転手に喩えれば、うるさい後ろの乗客(自分のマインド)に惑わされず、目の前の現実をしっかり見据えて、自分の目的とする方向に進みます。