スキナー・言語行動について

言語行動

スキナーの著書である言語行動(Verbal Behavior,1957年)では、私たちの言語活動が「オペラント行動」として扱われ、その生起や獲得については強化随伴性の枠組みを使って説明できると主張しました。

スキナーは言語行動を「他者を介して強化されるオペラント」と定義しています。

オペラントというのは、自発的な反応や行動のことで、それに対してレスポンデントは反射的な反応や行動を言います。

のどが渇いたときに自分で水道の蛇口をひねって水を得るのは、通常のオペラントになります。

誰かに「水を下さい」と要求して水を得るのは言語オペラントとなるわけです。

スキナーは言語オペラントを以下のように分類しています。

分類 概要
マンド 「特定の確立操作(動機づけ操作)が主要な制御変数で、その確立操作に対応した強化により形成・維持されている言語行動。」

マンドとは、要求言語のことです。

子どもが「ねえ、お腹すいた」といったとします。すると、食べ物がもらえます。食べ物は強化子として働き、お腹がすいたときには要求をするようになります。こうしてマンドを獲得します。

タクト 「物や出来事、あるいはその特徴が弁別刺激(特定の行動を出現させやすくなる刺激)で、般性強化により形成、維持されている。弁別刺激と反応との間に1対1対応のない言語行動。」

タクトとは、報告言語のことを指します。

子どもが「今日は学校で発表したよ。」と報告します。

すると母親から「そうなんだ、すごいね!」と言われます。

母親からの反応は強化子として働き、さらに報告するようになります。

こうしてタクトを獲得すると考えられます。

イントラバーバル

Intraverbal

(内言語)

「言語刺激が弁別刺激で、般性強化により、形成・維持されている。弁別刺激と反応との間に1対1対応のない言語行動。」

ある言葉が発せられた後に(もしくは文字として表示された後に)、何らかの関係のある別の言葉を発する行動です。

具体的には

・「いち、に、さん」の後に「し」と発声する。

・掛け算の九九の練習で「ににんが」の後に「し」と発声する。

・敵と味方を区別するため、合言葉として「山」に対して「川」と答える。

・外国語の単語に対応する日本語を覚える。

ここでは、どういう言葉とどういう言葉が関係づけられるかについては特段の制約はありません。

言葉のやりとりはほとんどがイントラバーバルです。相手が発した言葉と異なる応答が出現します。イントラバーバルは般性条件性好子によって強化されていると定義されています。

イントラバーバルの例

1 質問に答える

・「今日は誰と遊んだ?」「ゆうた君と遊んだよ」といったやりとりを他者と行う。

2 歌を歌う

・他者が「どんぐりころころ…」と歌ったら、「どんぶりこ♪」と続きの歌詞を歌う。

3 物語を話す

・「お話してよ」と他者に言われ、桃太郎の話をする。

4 活動を描写する

・「映画はどうだった?」と他者に聞かれ、「楽しかったよ」と感想を答える。

5 問題を説明する

・「なんでケンカになったの?」と他者に聞かれ、「ゆうた君がおもちゃを取ったの」と理由を説明する。

イントラバーバルができることによって可能になること

1 質問に答えることができる

・「名前は?」「何歳?」といった質問に答えることができるようになる。

2 目の前に存在しない事物や出来事について話せる。

・「雨が降ったらどうするの?」といった家庭の質問や、「猫ってどんな動物?」といった概念の質問ができる。

エコーイック

Echoic

(音声模倣行動)

「音声的言語刺激が弁別刺激で、般性強化により形成・維持されている。弁別刺激と反応との間に1対1対応のある音声言語的行動。」

誰かの発声を真似てできるだけ同じように発音する行動で、子どもが言葉を覚えるときには不可欠なプロセスになっています。

オートクリティック 「自己言語行動事が制御変数である。他の言語行動を修飾して、聞き手への効果をより有効にする付加的言語行動。」

自分の言語行動に寄りかかった言語行動と定義されます。

オートクリティックは、聞き手への効果をより有効にする言語行動です。助詞の使用や適切な語順の発話などはオートクリティックです。何かを要求するとき、その言い方によって要求が通りやすくなります。例えば、語順の例として、「ください、お願いします、ジュース」というよりも、「お願いします、ジュース、下さい」というほうが、聞き手はその要求を理解しやすいでしょう。

さらに細かく分類したものとして

・記述的オートクリティック…「~そうです」、「~かもしれません」など

・質限定的オートクリティック…「雨が降っていない」

・量限定的オートクリティック…「全てのカラスは黒い」

・関係的オートクリティック…「~と~」

・要求的オートクリティック…「どうぞ」

・推敲的オートクリティック…言語行動の繰り上げ、削除など

書き取り

(dictation)

「音声的言語刺激が弁別刺激で、般性強化により形成・維持されている。弁別刺激との間に1対1対応のある筆書的言語行動。」

音声を聞いて、同じ文字を紙の上に書く行動です。

書き移し

(copying)

「文字的言語刺激が弁別刺激で、般性強化により形成維持されている。弁別刺激との間に1対1対応のある筆書的言語行動。」

文字を見て同じ文字を書き移す行動です。

テクスチャル

(textual)

「文字的言語刺激が弁別刺激で、般性強化により形成・維持されている。弁別刺激との間に1対1対応のある言語行動。」

文字を見たり聞いたりする事によって、それに対応した読み上げを行う事です。

言語行動は、機能面からマンドとタクト、エコーイック、イントラバーバル、オートクリティックなどに分けられます。

例えば、おもちゃを見てそれが欲しいといった意味でおもちゃという場合はマンドですが、おもちゃを見て、単にその名前を言っているだけであればタクトです。