行動とは
スキナーは行動を「個体と環境との相互の関わり」と定義しました。しかしこの定義では、行動に当てはまるかどうかを判断することが難しいです。
死人テスト
行動分析では「死人テスト(Dead-man test)というものがあります。1965年に行動分析学の研究者であるオージャン・リンズレー(Ogden R Lindsley)によって開発されました。「死人にもできることは行動ではない。」という行動の定義のことです。逆に死人にはできないことは全て行動。基本的に~しないなどは行動ではない。
例 暴れない、じっとしている、失礼なことを言わない、これらは全て行動ではない。
行動とは、状態ではありません。
否定形ではなく肯定した形で表されることを意味します。逆に言えば、肯定の形での世界への働きかけ、意思表明=生きるということです。
つまり、話すことは死人にはできないから行動であるけれども、黙っていることは死人にもできるから行動ではない。また、食べることは行動だが、食べないことは死人にもできるから行動ではないということになります。
死人にできること | 例 (どれも動きのないものです) | |
受け身 | ~される | 触られる、殴られる、話しかけられる、褒められる、なでられる |
状態 | ~している | 座っている、寝ている、横になっている、手に持っている |
否定形 | ~しない | 食べない、怒らない、泣かない、閉めない、嘘をつかない |
行動でないものは、その前後の変化がありません。変化のないものは観察して分析する事ができないので、行動とは見なせないです。
学校で「静かにする」「廊下を走らない」などを標的行動(指導目標)にすることは誤っているこということになります。つまり「静かにする」なら「お口は閉じます」、「廊下を走らない」なら「歩きます」、「おしゃべりをしない」なら「黒板を見ます」、「泣きません」なら「深呼吸してください」というように言い換えて指示します。
指示が伝わらないことは「言うことをきかない」のではなく、「何をすればいい分からない」と考え、伝わるような言い方を理解すれば、子どもとの接し方が変わってくるでしょう。
具体性テスト
問題の解決のためには行動をできるだけ具体的に定義する必要があるため、その行動が行動分析学で扱えるだけ具体的かどうかを確認するものが「具体性テスト」です。ターゲットとする行動が決まらなければ効果的な行動改善ができないため、「どれだけ具体的であればいいか」という疑問に対する回答ができなければ解決に向かうことができません。
例えば「試験勉強をする」というのは、具体的ではありません。何をどの程度勉強したのか分からないからです。教科書を読んだのか、計算問題を解いたのか、漢字を練習するのかという具体性にかけます。
同様に、「清潔にする」「ダイエットする」というのも具体的ではありません。具体的なのは、例えば「計算問題を10問解く」「トイレの後で、手を洗う」といったものです。
このように、「死人テスト」と「具体性テスト」の両方をクリアしたものを、行動と呼ぶことが出来ます。