アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)5 脱フュージョン・エクササイズ例

(1) 苦悩リストの作成エクササイズ

このエクササイズでは、現在抱えている苦悩を見つけていきます。
まずはじめに一枚の上を用意して、「あなたが体験した苦痛とそれに対する反応」を書きだしていって、その脇に継続時間を記入します。
これを、苦悩リストにして、その時の苦痛に対する反応(思考や感情、身体感覚など)と一緒に、苦痛自体(他者や状況などの出来事)も書いていきます。
例えば、「会社の上司に怒られて、自分はダメな人間だと感じた」というように書きます。
「会社の上司に怒られた。」は苦痛で、「自分はダメな人間だと感じた。」は苦痛に対する反応です。
これを10個を目安にして、書いていきます。
苦悩リストを埋めることができたら、次はその苦悩の重要度を検討していきます。
ここで新しい紙を用意して、重要度の高い順番に並べ書いて書き直します。
重要度は純粋に苦悩を最も負担に感じているかを基準にします。
判断が難しい場合は、苦悩が続いている期間を参考にします。
次に、それぞれの苦悩の関連性を見つけていきます。関連性とは、ある苦悩の大きさが変化したら他の苦悩の大きさも変化するというようなことです。
例えば「会社の上司に怒られて、自分はダメな人間だと感じた。」という苦悩と「同僚がひそひそ話をしていると自分のことを悪く言われている気がして、息が苦しくなる。」という苦悩があったとします。
そして、会社の上司に叱られた後に、同僚のひそひそ話がいつもより気になると感じるようであれば、両者は関係があるという事になります。
このような関連性を苦悩間で見つけた場合は、新しく作ったリストの右横に苦悩同士を矢印で(⇔)と書きます。
思いつく分だけ矢印を書いたら、一つの苦悩がすべての苦悩と矢印でつながる場合もあれば、度の苦悩とも矢印でつながらないものもあると思います。
苦悩の重要性はリストの上位であるほど高く、それは矢印のつながっているもの程高いといえます。
もしここで苦悩の重要度を変えたければ、また新しい紙に改めて書き直してください。
苦悩について考えるのは気分の良いことではありませんが、本当に苦しみを何とかしたければ苦しみと向き合うことが必要になります。
そして苦痛に対する思考、つまり苦悩を見るためにも苦悩自体を知る必要があります。

(2) マインドさんのエクササイズ

これは、思考・感情・記憶を一人の人間として扱うというエクササイズです。

参加者に、自分の中に出入りする思考・感情・記憶といった指摘事象を一人の人物とみなして、その人物に相応しいと思われる名前をつけてもらいます。
そして、その人物が自分の中に出入りし、自分に語り掛けてきていることを意識することを説明して、その後、不快な単語1つに対して、その人物が語り掛けてくる文章を一文作成します。
宿題(ホームワーク)として、日常生活で意識的にエクササイズを使用した回数と、自分の中に出入りしている人物が語り掛けていることを意識しながら文章を作成します。
例えば「また私のマインドがやる気を失っているな」「あぁ、マインドが怖がっている」といった感じです。
思考や感情を他人だと思えれば自然と自分を客観的に見ることができます。

(3) カードを持ち歩くエクササイズ

カードに不快な単語を記入し、もち歩くというものです。
カードの紛失を防ぐために、カードの代わりとして、スマホの待ち受け画面を使用しても良いでしょう。
日常生活の中で3分間眺めて、回数の記録と実施した感想をセラピストに伝えます。

(4) 考えにラベルを貼るエクササイズ
(Labeling your Thoughts)

不快な単語に対して、「私は、~という考えがある。」というラベルを前後に追加するというエクササイズです。
不快な単語それぞれに対して、ラベルを追加した文章を一文ずつ作成します。
宿題(ホームワーク)として、日常生活で意識的にこのエクササイズを使用した回数を記入し、その後「~という考えがある。」ということを意識しながら記入します。

(5) 「ミルク」のエクササイズ
(Say the Word “Milk” as Fast as You Can)

これは、40秒間程度、「ミルク」という単語を何度もスピーディーに繰り返すというものです。エクササイズは日本人向けに「ミルク」ではなく「お茶」などにしても良いでしょう。

(6) 葉っぱのエクササイズ
(Floating Leaves on a Moving Stream)

まず、小川に葉っぱが一枚一枚流れていくことを想像してもらい、次にその葉の一つ一つに自分が今考えていることや感じていることを乗せて、それが小川の岸から眺めるというものです。
そのときの注意点として、自分と葉っぱの距離は一定に保つことです。
距離が近くなってしまった場合は、最初から想像をし直します。
このエクササイズの目的は、「マインドフルネス」の「観察」と「描写」という2つの切り口(ファセット)を向上させ、記述と評価の違いを促進させることです。

(7) 「写メール」エクササイズ

ウォーキング中に見つけた「新しい発見」をスマートフォン等に付属するカメラで写し、それをセラピストに送信するというエクササイズです。
このエクササイズの目的は「マウンドフルネス」の「観察」と「描写」という2つの因子を向上させ、記述と評価の違いを促進させることです。