依存症について
VOICE著者インタビュー「依存症の真相」より
「依存症という病気」だと認めること
これまで、アルコールやギャンブル、セックスなど何らかの依存症を持っている人たちに対しては、単に「だらしない性格」『医師の弱さ』の問題として、責め立てる態度が一般的だったでしょう。でも、こうした態度が返って症状に対して逆効果になることが問題なのです。本人の意志ではどうにもならない、「心の病気」なんだと認めるところから、本人も家族も立ち直っていくケースが沢山あるのです。
依存症の本を書く動機
患者さんに依存症という症状が現れるのは、速くても思春期以降、大体は大人になってからなのですが、実は原因は、幼少期から思春期にかけて作られていることが分かったからです。
依存症とアダルトチルドレン(AC),ADHDについて
まずACについてですが、私は患者さんの初診にたっぷり1時間半ぐらいかけることにしています。今の症状について聞くだけでなく、両親、祖父母など3代前までさかのぼっての家族関係、それから幼児期からの育て方をじっくり聞き出すのです。すると、依存症の患者さんの場合は特に、家族関係に不健全な部分がある。つまり本来の家族の機能を果たしていない「機能不全家族」で育っている人が大半であることが分かってきたのです。・うちは大丈夫、普通だ・と思っている家族が実は危ない。深刻な問題を抱えているケースが多いのです。こうした家族で育った人は、いわゆるACという共通のパーソナリティー特性を持つようになります。AC自体は病気ではないのですが、この特性が依存症をはじめいろいろな心の病の原因となりやすいのです。
依存症とADHDとの関係
これは、依存症の治療のために来られた患者さんが、実はADHDだった、というケースが少なくないからです。ADHDは、「注意欠陥多動性障害」という訳語から誤解を招きやすいのですが、知能の高い低いとは関係ない、脳機能の経度の発達アンバランスといえます。そのために、他の子どもに比べて、落ち着きなく動き回るか、ボーっとして忘れものをしやすいといった特徴が現れます。
ADHDの問題は、一見して普通の子どもであるために、障害が発見されにくいことです。代わりに「なぜ他の子にできることができないのか」「だらしない、不真面目だ」と親や教師から責められて育つために、自己評価が低くなっていきます。これを私は「ADHDの逆スパイラル効果」と呼んでいます。その結果、ADHDの人がACでもある、というケースが少なくありません。反対に、思春期までにADHDと診断されて、適切な治療と教育を受ければ、ほぼ問題なく社会生活を送れる場合がほとんどなのです。
ADHDの人が成長後に陥る依存症は、ADHDそのもののせいというより、ADHDの「二次的情緒障害」といえます。結局、ACもADHDの二次障害も、家族の問題と切り離せないところがあります。問題児は、その家族の抱える問題を心の病気という形で代弁する、犠牲者とも言えるのです。
参考
VOICE著者インタビュー