関係フレーム理論2 刺激等価性クラスについて

刺激等価性クラス

訓練していない関係学習が確認した場合には、派生的関係学習と呼びます。刺激等価性クラスの研究はその代表的なもので、派生的関係では恣意的な関係学習が成立し得ます。刺激等価性クラスには以下のものがあります。

(1)反射律

「猫」の絵カードを示して、「犬」、「猫」、「馬」、「牛」、「鳥」の中から同じ「猫」の絵を選ばせるという見本合わせ課題を訓練したところ、未訓練である「犬」→「イヌ」、「馬」→「馬」、「牛」→「牛」、「鳥」→「鳥」の見本合わせも容易にできるようになった。

(2)対称律

幼児または日本語学習者に「猫」というカードを示し、「イヌ」、「ネコ」、「ウマ」、「ウシ」、「トリ」という5枚のカードから1枚を選ばせるという訓練を行ったとします。正解の猫を選んだときはご褒美を貰える。

次に、「ネコ」というカードを示し「犬」、「猫」、「馬」、「牛」、「鳥」の中から1枚を選ばせるというテストを行います。「ネコ」→「猫」という訓練は一度も行っていないにもかかわらず、高確率で「猫」が選ばれました。

(3)推移律

像、猫、ネズミが描かれた3枚のカードがあります。実物を見たことのない子どもに、

・まず、「ゾウ」と「ネコ」のカードを同時に提示し、「ゾウ」を選んだときにご褒美を与えます。

・次に「ネコ」と「ネズミ」のカードを同時に提示し、今度は「ネコ」を選んだときにご褒美を与えます。

・最後に「ゾウ」と「ネズミ」のカードを同時に提示したところ、初めての組み合わせにも関わらず、その子どもは「ゾウ」を選びました。

(4)等価律

・AさんとBさんが仲良く接している。

・BさんとCさんが仲良く接している。

という2つの場面を別々に目撃したとします。この場合、透過率が成り立てば、AさんとCさんも仲が良いと予測されます。

以上(1)~(4)の必要条件が満たされた場合を「刺激等価性の成立」と呼びます。

刺激等価性とは、例えば「犬」という文字を読んでinu(音声)と読むことができ、四足でワンワン吠える姿が思い浮かぶ。また、inuと聞いて、「犬」という字が書ける。これらの刺激が同じ(等価)ということが分かることです。

刺激等価性クラスの留意点

・いずれの例も「同じものを選んでね」といった言語的教示は前提にしていません。

・(1)の反射律に関して、動物の向いている方向が同じであれば正解、反対を向いていれば不正
解という課題であったとすれば、動物の種類が同一であるかは手がかりになりません。テス
トとして右向きの猫を提示したとき、左向きの猫を選べば不正解で右向きの馬を選べば正解
ということもあり得ます。

・(2)の対称律に関して100円だ迄アイスクリームを購入した場合、100円玉→アイスクリーム
は成り立ちますが、いったん購入した後でアイスクリーム→100円玉という返品を求めても
応じてくれない可能性はあります。・(3)の推移律に関しては「3すくみ関係」では成り立ち
ません。例えば、

・まず、じゃんけんの「グー」と「チョキ」のカードを同時に提示し、「グー」を選んだと
きにご褒美を与えます。

・次に、「チョキ」と「パー」のカードを同時に提示し、今度は「チョキ」を選んだときに
ご褒美を与えます。

・最後に、「グー」と「パー」のカードを同時に提示しました。「グー」を選んだら、負け
になってしまいました。

という例が挙げられます。

つまりあらゆる場合に成り立つわけではありませんので、派生的学習は家庭に基づいた賭けのようなもので、その過程を採用することのメリットと、デメリットは検討する必要があります。

刺激・刺激間の関係反応に関したフレームとして

・恣意的に適用可能

・派生的

・学習性

・文脈の制御下にある

という特徴を持っているものを関係フレームと定義します。それらは

・相互的内包(mutual entailment)

・複合的内包(combinatorial entailment)

・刺激機能の変換(transformation of stimulus function)

という3つの特徴を持ちます。刺激等価性に当てはめると対称律は相互的内包、推移律と等価律は複合的内包となります。

刺激機能の変換としては、例えば、今まで実物の猫を触ったことのない子どもに猫を教える訓練をし、その後にこの子どもが実物の猫と遊んでいて引っかかれ、泣きながら猫から逃げたとします。さらにその後、母親から別の場所で猫を見つけて「あら、猫よ」と叫んだところ、子どもはその声を聞いただけで泣きながら逃げたという状況がそうです。

関係フレーム理論による言語行動

関係フレーム理論では、従来の「レスポンデント条件づけ」、「オペラント条件づけ」に加えて、「関係フレームづけ」を提唱し、関係フレームづけの観点から言語に対する行動分析学的説明がされています。

言語は刺激間の関係づけで構成されると考え、このような関係づけを関係反応と呼びます。
例えば、「私は、姉よりもピアノがうまい」と言った言語の場合、「私」と「姉」という刺激を「よりもうまい」という関係で結び付けることによって生起します。

関係フレーム理論における言語行動は、複数の至芸を関係づけ、その刺激の機能を変える行動(関係フレームづけ)と定義されます。

ポイントとして

・結び付けられる刺激は「言葉」である必要はありません。

・刺激反応の返還によって、意味が発生します(象徴性)

・相互的内包(対称律)、複合的内包(推移律・等価律)によって多数かつ多様な派生的関係が成
立します(生成性)

象徴性と生成性は、刺激等価性・関係フレーム理論によって説明が可能になります。

・言葉の意味には、文脈と独立に決まる部分があります。

・言葉が生まれた瞬間から後を扱っており、より日常体験に近い言語活動の性質を捉えるのに
適しています。