ほめるポイント
ほめるポイントは,練習しているメンバーの言語的,非言語的コミュニケーションすべてにあります。
練習したメンバーのものの見方,考え方,声のトーン,話すときの姿勢,視線の合わせ方,身ぶり手ぶり,表情,体の動かし方,歩き方,立ち方,立ち止まり方・・・。また,話のはじめかた,話の流れ,話の中の一部分,話の要素,話の内容,話題・・・。
どのようなことでも,行動リハーサル(ロールプレイ)の後,すぐに,具体的に,良いところをほめます(プラス評価します)。ここで,悪い点を指摘してはいけません。悪い点の指摘をしてしまうと,発達障害の人たちの自己評価が下がり,萎縮し,動機づけがなえてしまうからです。
ではどうやって改善するでしょうか
「より良くする点を考える」の順番になってから,具体的にどのようにすれば,先ほどの行動リハーサルの内容が改善されるのかを提案します。このときも,練習したメンバーの行動リハーサルの悪い点をあげつらってはいけません。「このようにすればもっと良くなるよ。」ということに強調点を置きます。(良い例:「話しかけるとき,視線を合わせたらどうでしょう。」,「話すとき,口元に少し力を入れ,明るい表情で言ったらどうでしょう。」など。)
そして,その改善点を取り入れて,再度練習した後,良かった点,良くなった点をプラス評価することが大切です。
練習しなかったメンバーも学びになる
SSTを行ったとき,練習をしなかったメンバーにも効果があるでしょうか。SSTは,「人は,社会の中で,他人の言動を観察することによって学び,自分自身の言動を変えていく。」という社会学習理論を基盤としています。直接練習をしなかったメンバーも,SSTのグループに参加し,人のロールプレイを観察しただけでも,効果があるとされています。
実際の場面でできることが大切
練習課題やチャレンジ課題は,実際の場面で「できる」ことが大切です。そのためにも,課題設定のとき,「実現可能な課題設定」を行います。
練習課題を設定し,行動リハーサルを行い,それをチャレンジ課題として,実際の場面で成功させるという体験を繰り返すことによって,SSTに参加するメンバーは自己評価を高め,より効果的な人との関わり行動を身に付けていきます。
もしも,チャレンジ課題を実際場面で行ってみたあと,うまくいかなかった報告があった場合,実現可能な目標に置き換えたり,改善点を提案して再度練習し,実際の場面で成功する体験に結びつくよう支援していきます。
問題解決法の活用
練習したい課題があっても,具体的にどのような言動を練習したいかが定まらないことがあります。そのようなとき,問題解決法を用いるとよいでしょう。
問題解決法は,ある特定の課題に対してとり得る言動の選択肢を列挙し,それぞれの選択肢の長所と短所を考える(板書する)。どのような選択肢があるか,それぞれの長所,短所などを順番に,グループメンバーから出してもらいます。
そのうえで,最終的にどの言動を練習するか(そして現実場面で行うか)は練習するメンバーが選択します。この技法は,メンバーのものの見方や考え方,選択肢の幅を広げるのにも活用できます。
参考
内閣府 ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)