JASPER(ジャスパー)1 JASPERとは

JASPERについて

JASPERは自然な発達的行動介入(Naturalistic Developmental Behavioral Intervention:NDBI)といわれる方法で、遊びという自然な状況で子どもの発達を促していきます。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の発達と心理学の教授であるコニー・カザリーConnie Kasari教授らが開発しました。
JASPERは発達障害の子ども向けの行動療法の一つで、コミュニティーベースのプログラムにより、保育園で保育士によるアセスメントと介入を実施し、家庭での親による実施をする早期支援方法です。
JASPERを行って、親たちが会話の仕方を学ぶことによって、発達障害の子どもたちの言葉の能力が向上したという研究発表がありました。
親たちは、子どもが何に注目するかを意識すること、言葉やおもちゃで楽しませる方法を学びます。
きちんとした療法士により行われれば、社会的スキルとコミュニケーションスキルが改善されることが知られています。

JASPERの特徴

JASPERの特徴は発達障害の子の療育のために親に学んでもらうもので、このアプローチは療育を子どもの日常生活に取り入れることできるようにします。
コニー・カザリー教授によれば「親が実際に療育を行いました。
親も量育士と同じように方法をマスターすることができました。
また、親たちが療育の方法を完全にマスターしなくても、75%以上の技術を学べば、子どもは改善しました。
コニーと研究チームは、20単語未満しか話せない5歳から8歳の22人の発達障害の子どもたちに研究に参加してもらい、6カ月の間、JASPERの療育を受けました。
最初の3ヶ月間は量育士が担当し、親たちはそれを見て学びます。その後の3ヶ月間は親たちが療育を行いました。
親たちは、例えばおもちゃを手の届かない所に置いたり、おもちゃで予想外の遊び方を行ったりすることで、子どもとコミュニケーションを行う方法を学びました。
また、子どもが遊んでいるときに話そうとした言葉を繰り返し話すように教えられています。

JASPERはJoint Attention, Symbolic Play, Engagement, & Regulationの頭文字を取ったもので、それぞれ以下の意味があります。

Joint Attention 共同注意(共同注視)

Symbolic Play 象徴遊び(見立て遊び)

Engagement  関わり(共同参加)

Regulation   感情調整(自己制御)

JASPERの原則

・親の関与が重要

・遊びの幅を広げて子ども主導のコミュニケーション機会を増やします。

・逆模倣(動作・音声)

・子どもの行動のナレーション

・子どもの言ったことを広げる

・正しい情報をフィードバック

・近くに座ってアイコンタクトする

・子どもが参加しやすい環境設定

JASPERの構成

1 環境設定(Environmental Arrangement)

子どもが遊びに集中しやすい環境を作ります。セッションを行う場所の広さ、目の前に置くおもちゃ、といったことに気を配ります。

2 模倣とモデリング(imitation and modeling)

子どもが自発的に行った機能的な遊びや共有するための行動を即座に模倣すること、子どもが機能的でない行動をしている際には遊びのモデルを示すことによって、遊びのルーティンを作ります。

3 ルーティンの形成(routine)

模倣とモデリングを重ねることで、短い流れのある遊び(ルーティン)を作ります。子どもの遊びの段階に即した流れを作れるようにします。

4 言葉かけの方法(language technique)

子どもの発語のレベルに合わせて言葉を発するようにします。(無発語・単語の子どもには単語で、二語文の子どもには二語文で言葉を伝えます。

5 拡大(expansion)

子どもが完全にできる遊びと、出始めたばかりの遊びを組み合わせて、子どもの遊びの幅や段階が広がっていくようにします。

6 共同注意と要求をひき出します(programming joint attention requesting behavior)

テンポよく遊んでいるところにわざと間を置いて注目を促します。実際に指差しの形を作らせる、等の技法を通して、共同注意と要求行動を子どもが行う機会を増やします。

これらに加えて、「感情調整(regulation)」も子どもの様子に応じて実践が必要です。感情調整の技法を用いるためには、応用行動分析で用いられる4つの行動の機能(物や活動を得る、注目を得る、回避する、感覚を得る)を理解しておく必要があります。