ソーシャル・ストーリーとは
自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害の子どもたちに、世の中の暗黙のルールやコミュニケーション・スキルを平易な文章・読み手の人格を肯定する文体で教えるもので、有効な視覚支援の教育法とされています。
あるひとつの社会の約束事や暗黙の了解は、自閉症の子どもたちにとって認識しにくいものです。当たり前のことだから従えというのは、あまりにも乱暴なのです。どの場所へ行き、誰と会い、そこでルールを明らかにしてあげること、それを視覚的に伝えること、構造化することが求められているとのこと。また、繰り返し使えるので、何度も確認出来るわけです。
また、ソーシャル・ストーリーは、あくまでも問題行動を無くすのが目的ではありません。子どもの理解力を高めること、自分の遺志で適切な行動を選択できるようにする手助けなのです。
ソーシャル・ストーリーは、SSと略します。また、教育者にASD思考の理解を訓練する方法でもあります。
ソーシャル・ストーリーの考案者
ミシガン州ジェニソン郡の公立学校で、長年にわたり教師とASDの生徒のコンサルタントを勤めたキャロル・グレイが1991年に提唱し、1993年にガイドラインを示しました。NPOのGray Center for Social Learning and Understanding所長。ASDの人の教育活動に対して、バーバラ・リピンスキー賞を授与されました。
著書に
「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー-新しい判定基準とガイドライン」(2006年)
「ソーシャルストーリー・ブック入門・文例集【改訂版】」(2010年)
などがあります。
キャロル・グレイは、ソーシャル・ストーリーの定義を「その定義に沿ったスタイルと文型によって、一般の社会生活で登場するコミュニケーション上のキュー(合図)や事物の捉え方を適切に理解し、一般的にそれらにどのように対応したら良いのか、その対応の仕方や場に応じた考え方を一つにまとまったストーリーとして記述して説明する教育技術です。」と定義しています。
また、ソーシャル・ストーリーを書く目的を対象児の社会的な理解を促進することとしており、「自閉症の人にとってわかりやすい方法で、状況に応じた必要な社会的な情報を共有すること」と言っています。(2000年)
ソーシャル・ストーリーはさまざまな子どもたちと状況に対して効果を発揮する可能性が示唆されていますが、子どもたちがそのストーリーで用いられている言葉や文章などをどこまで理解しているかは、慎重に吟味されるべきで、ストーリーの内容は必要に応じて調整されなければならないと注意を喚起している専門家もいます。また、ソーシャル・ストーリーのひな形は出版されていて手に入りやすいので、親や教師や専門家がこのひな形を学んで応用することが出来ます。
参考
Amazon
障害者関係専門書店スペース96
セイウィダム 育児と医療のコミュニケーションスキル情報サイト
沖縄県立総合教育センター 後期長期研修員第55集 2014年
岡山大学だ久貝院教育学研究科研究収録第141号 2009年
千葉県総合教育センター
三重県教育委員会事務局研修分野 2009年
NPO法人つみきの会