ESDM アーリー・スタート・デンバー・モデル1 ESDMとは

ESDM アーリー・スタート・デンバー・モデル
(Early Start Denver Model)について

 ESDMアーリー・スタート・デンバー・モデル(Early Start Denver Model)は、アメリカ・カリフォルニア大学デイビス校MIND institute(研究所)によって開発されて、実施されている、ABAを基本とする自閉症・発達障害を持つ子ども向けの超早期介入指導プログラムのことです。

ESDMの開発にあたっては、1981年にロジャースとその学生が就学前の2歳から5歳の自閉症のある用事を対象に開発された「デンバー・モデル」を基盤にしました。

ESDMの開発者

ESDMは2010年に2人の女性研究者によって開発されました。

1人はカリフォルニア大学デイビス校の精神医学行動研究科教授で自閉症治療研究分野が専門のサリー・ロジャース(Sally.J.Rogers)教授です。
自閉症やその早期診断、治療の分野に関する論文を
100以上発表しています。

もう一人はTEACCHの開発にも関わり、デューク大学医療センターで自閉症の早期発見や脳の発達および治療や遺伝子研究などが専門のジェラルディン・ダーソン(Geraldine Dawson)教授です。
国際自閉症学会の元会長で、アメリカ国立衛生研究所の顧問も務め、ジェームズ・マッキーン・キャッテル賞
(2012)、自閉症学会賞(2004)など数々の賞を受賞しています。

ESDMのプログラムとその効果

このプログラムは、脳科学から見た自閉症の脳の学習様式に合わせて、開発された指導方法です。

12~48か月の間の自閉症の子どものため行われます。

効果としては、学習や言語能力の向上、適応行動、自閉症の症状の軽減などがあります。脳スキャンを用いた研究では、ESDMが社会及びコミュニケーション能力に関連する脳活動を改善することを示唆しています。

2歳前に療育を開始した子どもたちが、知力や発達に急速な伸びを示したばかりではなく、2015年にはESDMを受けた子どもたちの長期にわたる効果の維持も証明されました。

このような科学的根拠が認められた方法として、世界各地で導入が進んでおり日本でも勉強会が始まったところです。

このプログラムはASDの特性に配慮しながら両親とセラピストは遊びを使って前向きで楽しい関係を築きます。

親の関与はESDMにとって重要な部分です。

子どもと遊びと共同活動を通して、子どもは言語、社会、認知のスキルを向上させ、子どもの能力を底上げしたり発達を促したりするものです。

これは1歳台から(場合によっては1歳前から)でも取り組めるものです。治療はグループや1対1で行い、家庭での集中指導は11で行われます。

非常に効果的であり世界的に注目されているものの実際には高度な専門性が必要で、またライセンスによって制限されています。また、改善度に差を出すためには1週当たり25時間以上の専門的関わりが必要で、そのための費用がかかります。

アメリカではTIME誌をはじめ大手メディアで取り上げられ、日本でもNHK Eテレの「サイエンスZERO」で取り上げられました。また、アメリカでは6歳以下の自閉症の子どもたちへの効果的介入プログラムを多く利用してもらうために、この年齢の子どもたちへの全てのプログラムを無料で提供する法律を制定しました。

20183月現在では日本にESDMのライセンス認定を受けている方は西日本在勤の方が8名で、東日本には1名しかいません。認定のためには入門編のワークショップを受講した後、上級ワークショップを受講し、2年間のトレーニング期間を経て、認定に合格すればESDMセラピストになることができます。専属のトレーナがついてトレーニングをします。ESDMセラピストは心理学者、行動分析士(BCBA)、作業療法士、言語聴覚士、小児科等の専門医です。

ESDMの扱う領域

「受容性コミュニケーション」、「表出性コミュニケーション」、「共同注意」、「模倣」、「社会性」、「遊びのスキル」、「認知機能」、「粗大運動スキル」、「微細運動スキル」の9つの領域があり、特に「模倣」、「共同注意」を含む「前言語コミュニケーション」、情動の共有を含めた「社会性」、「遊び」の5つを重視しています。

ESDMでは9つの領域が4つのレベつに区分された発達カリキュラムチェック表(ESDM Curriculum Checklist)を用いて自閉症のある子どもの発達にかかわる課題を把握し、その結果に基づいて目標を定め段階的に指導を行います。

指導にあたってはABAのテクニックが用いられており、ESDMで使用するABAのテクニックは以下の通りとされています。

1 注意の獲得

2 ABC分析

3 プロンプト

4 結果の調整 好子、嫌子の利用

5 プロンプトフェイディング

6 シェイピング

7 チェイニング

これら技法をESDMの中では使用しています。

また、ESDMにはPRT(基軸行動訓練)のテクニックとして、試み強化をすることと、新規課題と習得済み課題を混ぜることが用いられています。

 

ESDMの特徴

1 全ての領域に対して対応できるように他職種の専門家チームと連携します。

2 通常の幼児の学習と理解に基づいて行われます。

3 前向きな関係を築くことに焦点を当てます。

4 自然な遊びや日常の活動の間に教えます。

5 遊びを使って相互作用とコミュニケーションを促進します。

6 身振りや顔の動きや表情、表出等の子どもの自発的な模倣を促します。

7 言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの発達を促します。

8 二人一組での遊びの場面で必要となる認知機能の促進に焦点を当てています。

9 保護者と協力することを重視しています。

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