インリアルの実際
ここでは、ビデオで録画したものをもとに大人のかかわりに焦点を当て、基本姿勢の確立と子どものコミュニケーションの発達段階に対応した関わりをすることによって、子どもの変容を目指した事例を段階ごとに示します。
大人側の評価
項目 | 評価 | |
反応的な
関わり |
子どものリズムに合わせていますか | |
子どもの開始を待っていますか | ||
子どもの言葉に耳を傾けていますか | ||
子どもの意図や気持ちをよく理解していますか | ||
遊びの
共有 |
子どもと同じ遊びをしていますか | |
子どもとの遊びを楽しんでいますか | ||
子どもが考えられるよう待っていますか | ||
遊びが発展できるようなモデルを示していますか | ||
言葉かけの
レベル |
指示的(命令・禁止・質問)言葉かけが多すぎませんか | |
子どもを認める言葉をかけていますか | ||
早口ではありませんか | ||
言葉が多すぎたり、長すぎたりしませんか | ||
子どもに分かりやすい内容ですか | ||
楽しい
雰囲気 |
表情豊かに楽しそうにかかわっていますか | |
ジェスチャーや指さし等を使って言葉の理解を助けていますか | ||
声は大きすぎませんか(威圧感を与えていませんか) | ||
声は小さすぎませんか
(よく伝わっていますか) |
事例
大人:小学校の支援学級担任
子ども:コミュニケーションの発達段階の異なるA君、B君、C君
目標 大人の基本姿勢の確立、一人一人の子どもの実態に対応した適切な関わり方の確立
その評価とその対応、大人の変容
評価
・子どもの開始を待たず、大人からの開始が多い。
・指示的な言葉かけが多い。
↓
心掛けた基本的対応
・SOULを心掛ける。
・肯定的な言葉かけをする。
「早くしなさい」→「○さんが待っているから行こう」
「もう終わり」→「○時だから終わりにしよう」
「片付けなさい」→「○と△どちらを片づけよう」
「○○したらだめ」→「○○したらいけないのは、どうしてかな」
↓
大人の変化
・子どもを見守り、開始を待てるようになった。
・指示的な言葉かけが減るとともに子どもを賞賛することも多くなった。
子どもへのかかわりと子どもの変化
A君の様子
自分の意図を社会化された手段によって他者に伝えることができる
・視線+発声+行為(渡す、見せる、指さす、ジェスチャー)
A君への大人のかかわり
意図を読み取り、言葉(一語文)に置き換える。
・子どもの行為や気持ちを言葉にする(パラレル・トーク)
「どうぞ」「もう一回」「ちょうだい」「見て」
・大人の行為や気持ちを言葉にする。(セルフ・トーク)
「ありがとう」「いいよ」
↓
A君の変化
「も(う一回)」「えんえ(せんせい)」など語彙の一部や一語文がみられるようになった。
人の視線が合うことが多くなり、やりとりを楽しむようになった。
B君の様子
意図的伝達段階の伝達手段に言葉(単語)が加わる。
・視線+言葉+行為
犬を指さし「わんわん」と言って大人を見る。
着替え後、「おうち」と言ってカバンを持ってくる。
B君への大人のかかわり
子どもの発音や文法の誤りを正しく直して返す。(リフレクティング)
子どもの一語文を二語文に広げて返す(エキスパンション)
「わんわん、大きいね」
子どもの意図に沿って、行動や言葉のモデルを示す。(モデリング)
「カバンに入れようね」
↓
B君の変化
「おそと、いく」など助詞が省略された二語文がみられるようになった。
C君の様子
一つの話題について大人と簡単な会話が成立する。二語文が出現しても以下の課題がみられることがある。
・助詞の省略「パパ行く」
・言葉の使い誤り「また来てね」と言って自分が帰る。
・質問の応答 無答、オウム返し
C君への大人のかかわり
基本的に一語文は二語文に、二語文は三語文に広げて返す。(エキスパンション)
子どもの課題に対応した言葉のモデルを示す(モデリング)
助詞を入れて返す(リフレ久ティング)
子どもの立場でモデルを示す。「また来るね」
「○と△、どちらを食べたの」など選択肢のある質問に変えたり、答え方のモデルを示したりする。
↓
C君の変化
「がっこう、バス、いく」など多語文がみられるようになった。
パターン化した質問には応答できるようになった。
インリアルでは、ビデオ分析を繰り返すことで大人の反応的な関わりが形成され、子どもの変容につながることが強調されています。
参考
鹿児島県総合教育センター 指導資料 2002年
明石書店
岩波書店
ミネルヴァ書房
横浜市養護教育総合センター 特別支援教育相談課 支援のヒント2008年
Amazon
ありのままの私日記“あなたがあなたらしく輝くために~樹庵”
福井県特別支援教育センター
軽度発達障害フォーラム
土曜の会
大阪府立大学学術情報リポジトリ